鼠径ヘルニアは、足の付け根の部分がぽっこり膨れる疾患です。膨れる以外に症状がないことが多いので待機的に手術をおこないますが、嵌頓(かんとん)といって膨れた部分の腸や卵巣などの血の巡りが悪くなると一大事です。嵌頓を疑うときは緊急受診が必要です。
小児外科とは
生まれたばかりの赤ちゃんから思春期ごろまでの手術を担当する診療科です。 頭部、心臓、四肢以外の全身の手術を担当します。日常疾患( 鼠径ヘルニア、 急性虫垂炎、 臍ヘルニア、 停留精巣、 腸重積症など)のほか、 新生児疾患(食道閉鎖症、 横隔膜(ヘルニア、臍帯ヘルニア、 腹壁破裂、 腸閉鎖症、 鎖肛など)、 消化器・肝胆道疾患(肥厚性幽門狭窄症、 胃食道逆流症、 胆道閉鎖症、 胆道拡張症、 ヒルシュスプルング病など)、 固形腫瘍(肝芽腫、 神経芽腫、 腎芽腫、 奇形腫など)、 救急・外傷(おもに腹部臓器損傷)を得意としています。他にも、頸のしこり、肺嚢胞性疾患、水腎症などの泌尿器科疾患、重症心身障害児の外科診療についても対応いたします。小児科の先生、産科の先生、麻酔科の先生などと協力して低侵襲かつ安全な小児外科医療に努めます。
日常疾患
日常小児外科疾患には以下のようなものがあります。
鼠径ヘルニア
急性虫垂炎
急性虫垂炎は、いわゆる「もうちょう」といわれるものですが、正確には盲腸の先の虫垂の炎症です。最近は、抗生剤治療も発達しており緊急手術で虫垂切除をする場合と、一旦抗生剤治療で炎症を抑えてから待機的に手術をする場合があります。
臍ヘルニア
臍ヘルニアは、へその緒がとれるころにでべそになって残ってしまうものです。1歳から2歳までに9割は自然によくなりますが、余った皮膚で臍の形がよくなかったりする場合もときにあります。2歳以降も臍ヘルニアが残る場合は手術をご提案します。
停留精巣
停留精巣は、男の子の陰嚢に睾丸がおりてきていない状態です。片方のことも両方のこともあります。1歳半ごろまでには手術を行います。似たようなものに移動性精巣がありますが、こちらは原則手術になりません。
腸重積症
腸重積症は、多くはおなかの中で大腸の内側に小腸が入り込んでしまうことで腹痛、血便、腸閉塞(ちょうへいそく)をおこすもので、生後6ヶ月から2歳頃までに多い疾患です。多くは、手術ではなくおしりから圧をかけてはまり込んだ小腸を押し返して治すことができますが、治らない場合や症状が重い場合は手術になります。
新生児疾患および固形腫瘍
新生児外科疾患は赤ちゃんをみるエキスパートのNICUの先生方と協力して治療に当たります。我々外科は主に手術を担当し、手術前後の全身管理などはNICUの先生方を中心に治療にあたります。また、食道閉鎖症や鎖肛などは手術後の食道や肛門の機能も重要なので長期に経過を見る必要があります。
小児固形腫瘍疾患は小児科の血液腫瘍のグループの先生と一緒に治療を行います。小児の悪性腫瘍は成人と異なり抗がん剤が効きやすく、放射線感受性がよいものも多いため最近は個々の症例に合わせて小児血液腫瘍のグループの先生方と治療戦略をたてます。我々外科は腫瘍を摘出する、治療に必要なデバイス(中心静脈カテーテル)を挿入する、診断のための組織採取を行うという役割があります。
小児内視鏡手術
我々は、手術後の人生が長い小児こそ低侵襲手術が必要であると考えています。鼠径ヘルニアや虫垂炎は原則としておへその創のみで手術を行っています。胃食道逆流症やヒルシュスプルング病などの小児外科手術にも内視鏡手術を取り入れており、安全面を第一に考えながらその適応を今後拡大していく予定です。
鼡径ヘルニアの腹腔鏡手術
急性虫垂炎の腹腔鏡手術